A field-like field and a satoyama with native species and broadleaf trees. We are in either of them. 2023
episode 1
野原のような畑を作る
苗目の代表、井上隆太郎が千葉県鴨川市の山間で畑を始めたのは、2014年。最初は200坪ほどの棚田の跡地を借り、無農薬・無化学肥料でハーブやエディブルフラワーの栽培を始めました。これまで園芸業界に20年近くいた経験を活かして、収穫量や作業効率を重視する従来の畑ではなく、自然で、見て楽しい、庭造りに近い考え方で畑を作ろうと考えました。一見ただの「野原」、でも実はよく見るとハーブが生えている。目指したのはそんな環境です。この場所で、ハーブやエディブルフラワーを少量ずつ育て、レストランやバーへの販売を始めました。
豊かな香りを放つ、力強い味
この場所で、ハーブやエディブルフラワーを少量ずつ育て、レストランやバーへの販売を始めました。
ナスタチウム、イエルバブエナ、ボリジ、ソサエティガーリック、マロウ、コリアンダー、レモンバーム、コーンフラワー、カモミール……。
限りなく自然に近い環境で作った植物は、豊かな香りを放ち、味も力強いものでした。
天気予報を見ながら、雨が降る前、そして夏が来る前に種や苗を植え、あとは自然の雨風に任せる。
背の高くなる雑草は抜く。そんな形での栽培でした。
都内から通いながら行っていたので、連日雨が降らず好天が続いた時は車を飛ばして川から水を汲み上げてまいたり、
ある日畑に行くとイノシシの被害で、畑が全滅近くまで壊されていたり。
原点を鴨川に置きかえて
山からの湧き水が流れる小さな小川が干上がってしまい、水がまけなくなったこともありました。
それでも一度根付いたハーブは翌年になるとまた芽吹き成長していきます。
クレソンだけは台風や大雨の増水で流されて結局一度も収穫できませんでしたが・・・。
2年を経て、レストランやバーからのオーダーが増えてきて収量を増やす必要があったこともあり、栽培環境を整えて、害獣などから少しでもこの場を守り、より良い「野原」を作ろうと決意します。
2015年末、家族で鴨川に引っ越しました。
episode 2
その頃、スコットランドのアイラ島に行く機会がありました。
言わずとしれたスコッチウィスキーの聖地ですが、蒸留所を巡る旅の途中に、wild food forager(野生食物採取人)の、MARK WILLIAMSと出会います。
彼の主催するツアーでは、森を歩き、そこにある植物の葉・花・根などあらゆる部位から食べられる部位を採取します。
また、それらをアルコールやビネガーに漬け込んだものなどを彼は持ち歩いていて、森の中にある石の塔でそれらを素材に、ランチを作り、バーチツリー(白樺)の樹液を採取しカクテルを作ってくれました。
この経験はとても衝撃的で、Forage(採取)という言葉を強く意識することになります。
厳しい自然環境、乏しい生産物のアイラ島でこれだけのことをしている人がいるのだから、多様な自然・植生のある日本なら、もっとやれることがあるはずです。
鴨川を拠点とした「栽培」と「採取」。やりたいことがはっきりとした言葉になってきました。
episode 3
そして「苗目」へ
帰国後、井上はハーブ・エディブルフラワーの生産をしながら、より良い栽培と採取をするための場所探しを始めます。
2018年、ご縁があり鴨川の高鶴山のふもとにある8棟、計約1000坪の温室を借り受けます。もともとは花きの生産場だったため、温室内にあった作業台をすべて撤去するところから作業を始めました。
固く締まった地面を掘り返し、あらたに土を入れ、耕す。
こうして土ができたところに、順次、種や苗を植えていきました。
温室とはいえ理想は「野原」
加温や冷房はせずに、様々な品種が混在する自然に近い環境で、100種以上のハーブやエディブルフラワーの栽培を行っています。
天候に左右されることも少なくなり、安定した供給ができるようになりました。
また、シェフやバーテンダーからの細かい部位の指定、新たな品種の栽培などのリクエストにも応えられる体制も整ってきました。
四季を通じた自然の恵み
一方、同じく鴨川のとある里山と出会います。杉ばかりの山が多い中、この山には多くの果樹や在来種や広葉樹などの樹木が生えており、中でも100本近くある梅の木は圧巻です。
この山から四季を通じて自然からの恵みを採取しています。
また、環境保持に有効な植物の育成や、養蜂を通じて、里山の保全・健全化を図ることもこの場所の目的の一つです。
episode 4
栽培と採取の拠点を得た私たちは、この活動に「苗目」という名前をつけ、
2018年2月、千葉県大多喜町で「mitosaya薬草園蒸留所」を営む蒸留家、江口宏志とともに、「農業法人(農地所有適格法人)株式会社 苗目」を設立しました。
苗目という名前は、温室のある土地の昔からの呼び名から取りましたが、自然が芽吹き育っていくという意味も込めています。
その後2022年に新たに5000坪の農地を取得(耕作放棄地を減らすという目的の最短ルートで小さな一歩)その場所では、みなさんと一緒に作る畑 シェアファームを開始。
2023年4月を目指し、シェアファーム内にある建物も改装し、直売所・カフェ・加工品製造のためのキッチンを作りました。
その場所では、食・農業・環境・自然を学べるコミュニティファームとして人々が集まる場所を目指しています。
この度リニューアルするウェブサイトを通じて、苗目の活動を知ってもらうことと同時に、ecサイトも充実していきます。
自然の中から生まれるハーブやエディブルフラワーの力強い味や香り、また植物の新たな可能性を体験してもらえたらうれしいです。
そして新たに始まったコミュニティ、<naeme farmers stand> <naeme share farm>にも是非お越しいただき、コミュニティにご参加いただけたら嬉しいです。